2006年4月 1日 (土)

枝川公一『バーのある人生』(中公新書)

バーのある人生—なかなかすてきなタイトルである。バー遊び入門,とでも言うべき本だ。

バーはなんだか取っつきにくい,と感じている人は多いようだ。ぼくも最初はそうだった。だから最初はバーと言ってももっぱらホテルのバーを利用していた。友人に連れられて大阪・お初天神のバー「Bar THE TIME天神」に入ったのが,ホテル以外のバーに初めて入ったときだ。それ以来,何軒か行きつけの店を持つようになった。いちばんよく行っているのは地元の水戸にある「Bar Area」で,これに天神と,沼津の「Victory」を加えた3つが,ぼくが顔を覚えてもらっているバーだ。

バーの取っつきにくさの原因の1つは,暗黙のルールが存在する点だ。「粋」であるかどうかがルールの根底に流れていると言ってよいだろう。バーの時間はバーテンダーと客の共同作業の成果であり,客の側にもある程度の知識と一定の振る舞いが要求される。そこまで行かないにしても,ある程度のことは知っておいたほうが何かと行動しやすい。この本はそんな「暗黙のルール」を少し教えてくれる。あくまで「少し」だ。何もかもを教えてくれるマニュアル本では決してない。マニュアルがほしいなら,バーになど行かないほうがよい。

本の内容を少しだけ引用で紹介しよう。ぼくがいちばん共感した部分だ。

バーの楽しさ,バーテンダーの生き生きとした動作,カクテルのおいしさ,それらが生み出されるシーンに,客は参加している。つまり,客は単なる受益者ではない。よりよいバーの時間をつくっていくための協働者なのである。あるいは共犯者と言えるほど深く関わることもある。力を合わせる相手は,もちろんバーテンダーであり,他の客たちである。(p.146)

この本は,こんなふうに作られるバーでの「ひととき」へのパスポートだ。

さっそく「Bar Area」のオーナーに進呈した。かなり共感しているようだから,内容も間違いないだろう。

この本といっしょに読んでみてほしいのが『日本のグッドBAR』だ。こちらはガイドブック的に使える。

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