乗り物と風景
旅行者と風景との関係は,どんな乗り物に乗っているかによって大きく変わってくる。
街の風景について言うと,バスに乗っているときにその街のことがいちばんよくわかると思う。バスは街の中を走るから,雰囲気も含めてその街が身近に感じられる。鉄道も街の中に入っていく場合があるが,車窓からの風景はバスに比べて何だかよそよそしい気がする。街の構造にしても,鉄道に乗っているとわかりにくい。
たとえば東京に向かうとして,新幹線を含む鉄道を利用した場合と,高速バスに乗った場合を考えてみるとよいだろう。常磐道方面から東京に向かうと,首都高速6号線を向島ランプで降りて,墨堤通りから浅草を経由して上野駅に向かう。この間は街中を走るから,常磐線を利用する場合に比べて街の様子がよくわかる。それでも常磐線は日暮里から上野にかけての風景があるからまだよい。つくばエクスプレスだと,南千住から先は地下だ。
街とは違うが,ぼくの好きなスポットのひとつである羽田空港についても,バスに乗っていればだんだん空港に近づいていくのがよくわかるのに対して,京急空港線は穴守稲荷の先,ちょうど空港の敷地に近づくあたりからは地下に入ってしまう。天空橋駅は実は空港のすぐ脇なのだが,降りてみなければわからない。この点では,浜松町から東京モノレールに乗ったほうが,空港の様子が車窓から眺められるのでよい。逆に,第一ターミナルの展望デッキからも,モノレールが走るのが見える。
もちろん鉄道にも例外はある。その代表は江の電だ。よく言われることだが,江の電は家の軒先をかすめて走る。腰越~江の島間では街中の道路を走る。むしろ路面電車に近い感覚だ。
風景の見え方が他の乗り物とまったく異なるのが飛行機だ。他の乗り物,特にバスに乗っていると「風景の中に身をおく」という感覚になるのに対して,飛行機の場合は地図を現物で見ているような感覚を味わえることがある。だいぶ前のことになるが,夏に小松から羽田まで乗ったとき,ぼくひとりしか乗っていない2階席の窓にCAが顔をすりつけるようにして外を眺めるほどの好天に恵まれたことがある。伊勢湾上空では、本当に地図と同じ形の知多・渥美半島を見ることができた。
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